台風一過の後、庭にばらばらと落ちた瓦を拾い集めたのが今朝のこと。
風台風だったためか庭を埋め尽くすというほどではなくても屋根の葺き直しが必要ではないかというくらい。
アーチャーと俺と二人で先に被害の少ない母屋の屋根瓦を直したのが昼前。
昼食をはさんで夕方になった今までは3分の1がむき出しになった土蔵の屋根にいる。
瓦を引っ掛ける瓦桟と呼ばれる横板が折れている部位もあり、組み木の要領でそれを直すのにかなりの時間をとられた。
屋根瓦を葺き終え、銅釘で押さえをした頃には落ちるのが早くなった日がうっすらと遠くの空を赤く照らしているだけだった。
「アーチャー、こっちはもう終わったぞ?」
「こちらもこれで……終わりだ。ふむ、思ったより手間取ったな。」
脚立を降りてそれを土蔵に仕舞い込むついでに作業の邪魔になるからと脱いでいた上着を着た。
土蔵の中はひんやりとしていて秋というよりは冬の気温に近い。
「暗くなるのが早いからな、このごろは……」
「この連休のうち1日はここを掃除しようと思ってたのになあ。」
きまぐれな台風は行楽や行事の詰まった10月の3連休のうち2日を台無しにしてしまった。
ハッピーマンデーの今日はようやく晴れ模様だったが。
母校である穂群原学園の学園祭が3日通しである筈だったが、台風のあおりを受けて最終日だけの開催になってしまった。
一度は顔を出しに行くかと思っていたが、外の出し物や出店は壊滅的で散々らしい。
弓道部はじめ運動部は部員総動員で、早朝から壊滅的な出店の撤去および修復にとりかかってどうにか体裁が整ったとのことだ。

埃っぽい土蔵の中を見回す。
それなりに整然としてはいるものの、何しろ積み上げて、押し込んで、ようやくこの状態。
もう少し片付けても良いだろうとは親父の生前から常々考えていたのだ。
ただその頃の俺にはどれが「いるもの」で、どれが「いらないもの」か判断できず先送りにしていた。
「この辺なんか、この家の前の持ち主の物じゃないか?」
「確かに、切嗣の趣味とはかけ離れたものも少なくないな……」
風流な坪も土蔵の隅で埃をかぶっていて、ナメクジが這った後のような文字の書物は時折虫干ししてはいるが内容はさっぱりだ。
「ん……何だ、これ?」
ためしに開けてみた葛篭の中に古ぼけたホーロー缶がある。
それを開けるとさらにブリキ缶。
「どうした、士郎?」
「ああ、なんかお経みたいなのが丸まっててさ……ボール、じゃないよなあ。何かの封印とか……んー、考えすぎかな。」
ソフトボール大のものがごろごろでてくる。
ブリキ缶にホーロー缶、そして密閉性のある葛篭に入れられていたのだから、よほど大事なものかもしれない。
古い日に焼けた和紙には墨文字で何かが書いてあって、それを丁寧に丸められているようだ。

「どれ、見せてみろ……む、これは」
驚いたようにアーチャーはしばらく眼を見張り、すぐに可笑しそうに口角を上げて笑い声をもらした。
「え、なになに?何なのか分かったのか?」
ほんの数ミリの穴をちらりと俺に見せてニッと笑う。
「確かにこれは般若心経だ。だが、誰かの写経だろう……誤字がある。字体からして子供の手習いといったところだろう。」
「へぇ。で、これって何?」
アーチャーがたちの悪い笑みで俺を見る。
「知りたいか?」
意地悪く笑いながら手の中のそれをそっと缶に戻し、似たような他の玉をどんどん物色していく。
「えーっと、式紙?こう、投げたらボンッと狐が……」
「どこの映画だ、それは!」
呆れたように言われてなんだかむかつく……笑いをわかれとは言わないけれど。
「ふん、まあいい。私は少し出てくるからお前は風呂にでも入って身奇麗にしておけ。」
「え、どこ行くんだよ。今晩は一緒に後夜祭へ行くって!」
「もちろん行く。それにはちょっとした下準備が必要だからな。……ふむ。そうだな、7時に弓道部のところで落ち合おう。」
「はあ?あ、おい、ちょっと、待てよ!」
言うが早いかアーチャーはサーヴァントならではの速歩で姿を消す。
見ればさっきのブリキ缶も無い。
アーチャーが持ってったのだろうというのは分かるが、一体何だというのだろう。
しかし当の本人は行ってしまったのだから考えても仕方ない。
言われたとおり埃と泥にまみれた体をどうにかしようと土蔵を後にした。

裏口から居間に戻って、時計を見ればまだ5時をいくらも過ぎていない。
本当に日が落ちるのが早くなったなと思いながら風呂場へ向かった。
髪の毛をがしがしを洗っていると、ざりざりと砂の感触。
思ったより酷い状態らしい。
体も念入りに洗い流して風呂から出た。
さっきまで来ていた作業着は洗濯カゴに突っ込んで、下着とジーンズだけを着込み、タオルで頭をガシガシとやりながら居間に戻る。
広い家に今は俺一人だ。
完全に真っ暗になった空をガラス越しに見ればオリオン座が見えた。
髪を完全に乾かしたところでようやく6時を過ぎて、ゆっくり歩いて行けばちょっと余裕があるという時間になる。
自室に戻り適当に服を選び、その上に秋用のジャケットを羽織った。
最近の俺の引き出しに詰まっている服は安物のそれから、それなりに値の張る流行り物にシフトチェンジしている。
ほとんどがアーチャーが買ってよこしたもので、箪笥の肥やしにしておくのは気が引けて結局、占拠されるに至った。
ここ2年でアーチャーとの身長差が半分に狭まったのもあって、流行り物の服を着ても見栄えするようなったのがせめてもの救いだ。
適当に髪を整えて玄関に向かいかけ……居間に戻った。
座卓の上の小物入れのカゴにチェーンに通されたリングとドッグタグがある。
少し悩んで、5つ並んだリングをチェーンから落とし、左右の指にはめる。
最近流行のごつめのシルバーリングに混じって、左手薬指にはめたそれだけはシンプルなプラチナリング。
ドッグタグだけになったチェーンを首に下げるとひやりとした金属の感触に少し肌が痛んだ。

ゆるやかな坂を下り、深山町のメインストリート交差点を折れて上り坂を進む。
学園が近づいてくると、大音響のバンド演奏が聞こえてくる。
歓声もかなり聞こえているから、たった1日の開催となった学園祭もそれなりに盛況だったようだ。
午後4時の公開終了になる。
その後、急ピッチで撤収が行われたとわかるグラウンドでは7時からの後夜祭の前座らしい洋楽部が耳に覚えのある英語曲を歌い終わったところだった。
「あれ……?」
広いグラウンドの片隅に赤いそれを見つけて思わず足が止まった。
消防車が2台停まっている、が……隊員たちはのんびりとしていて何かあったというわけではなさそうだ。
洋楽部と入れ替わるようにして邦楽部らしい少年たちがCMでよく聞く歌を歌い始める。
それを聞きながら、消防車を横目に俺は弓道場へと向かう。
「ん……あれ、桜!」
「あ、先輩……お久しぶりです。」
弓道場の入り口の照明の下に立つのは桜とそのサーヴァントとして現界しているライダーだった。
「なあ、アーチャー見なかったか?」
「アーチャーさんは中で作業をしています。」
「作業って、何の?」
ブリキの缶に入っていたあの玉のことだろうか。
たずねる俺に桜が肩をすくめて笑う。
「それは、秘密です!」
アーチャーが口止めしたとみえる。
ライダーに目をやってみても、メガネの奥の双眸からは答えを見出せそうに無い。

遠くから歓声が聞こえてくる。
後夜祭がいよいよ始まったのだ。
おそらく体育館と講堂で何かしているのだろう。
そもそも穂群原学園の学園祭はこのあたりでは一番集客のある大規模なもので、後夜祭も近隣住民を巻き込んで結構な盛り上がりだ。
腕時計を見れば確かに7時を過ぎている。
「あれ、先輩……今日はしてるんですね?」
「え、ああ……たまにはな。」
自分の左手薬指に向けられた視線に気がついて言葉を濁す。
暗い時間なら気づかれないだろうと思っていたのだが、さすがに事情を知っている桜は気づいたらしい。
「先輩、手がきれいだからアクセサリーとかよく映えると思います。」
と笑って見せた桜の後ろの扉がガラリと開く。
「あ……」
見知った顔をそこに二つみつけて俺は顔を上げた。
「すまない、予定外に時間を食ってしまった。」
「まったく!直ぐに済むって僕に言ったのはどこの誰だろうね、アーチャー。」
「君が計量を間違えなければあと10分は早く終わっていたぞ。」
「僕のせいにするな!」
喧々諤々と言いながら出てきたのはアーチャーと、俺の友人である間桐慎二だ。
同じ大学の弓道部に所属している慎二はあれよあれよという間に身長180センチを超えてしまった。
アーチャーと並んでも遜色ない体躯で、短めの髪を無造作にかき上げて口をへの字に曲げている。
「ライダー、士郎、アレを運ぶのを手伝ってくれ。桜、君は実行委員に準備ができたことを知らせてほしい。直ぐに運ぶから、と。」
「……はい。それじゃあ先輩、また後で。」
桜は俺に笑いかけて、それから少し厳しい目でアーチャーを睨むと小走りに校舎へと向かっていった。
「それで、何を運べばいいんだ?」
「こっちだ。」
弓道場の扉をくぐり、しかし道場へは上がらず、横の扉を抜けて土張りの安土へ抜ける。
いつもは短い芝が生い茂るそこに、底板のついた無骨な金属の筒がいくつもならんでいる。
触ってみるとまだ暖かい気がする。
それになんとなく感じる魔力の残滓。
「お前、何しようって……」
「見てのお楽しみだよ、衛宮。さっさと運んだ運んだ!」
直径15センチもない筒を抱えて先を行く三人を追う。
歩きながらざっと解析してみると難燃性マグネシウム合金とジュラルミンに近いアルミニウム合金の2層になっているのがわかる。
まるで大砲の砲身だな、と思い当たって……思い出した。
毎年後夜祭の最後を飾るのは小規模ながらこの季節では珍しい打ち上げ花火だ。
卒業生だったか在校生だったかに花火製造業者に連なる者がいて、ここ数年はその花火も学校のグラウンドでやるにはギリギリの規模にまでなっている。
そうなるとこの筒は打ち上げ花火用ということだろう。
そしてあの丸い玉は―――。

「おい、アーチャー。」
「何だ?」
「アンタ、火薬扱うのに免許いるって知ってるか?」
ちらりと俺を見たアーチャーは、ようやく気づいたか、というようにため息をつく。
「ああ、もちろんだ。仕事柄、火薬類取扱保安責任者と火薬類製造保安責任者の免許は持っている。さすがに煙火打揚従事者の資格はないが、それは業者に任せればいい。」
「仕事柄ってなんだよ、仕事柄って!」
ニヤリと笑うアーチャーは、知りたいか、とたずねてくる。
「遠慮しておく。」
「遠慮するな。日本では実弾を手に入れるのは面倒なことこの上ないのでな、自分で……おい、聞いているのか?」
「うわーわーわーわー!俺は何も知りません、犯罪者なんて知りません!」
「衛宮士郎、静かになさい。」
ライダーに睨まれて渋々腕の中の筒を抱えなおす。
「まったく、衛宮はいつまでも子供だな。」
茶化す慎二を睨んでグラウンドに出る。
屋内の会場に人を収容したのか、グラウンドには人の姿もまばらだ。もっとも校舎を見れば、窓にちらほらと人影があり、花火鑑賞の場所取りをしているようだ。
「すみません、衛宮さん。こちらで手配できれば良かったのですが。」
「いえ、こちらが急に言ったことですから。そちらは電気自動点火でしたね。」
「ええ。セッティングも終了しています。」
壮年の職人然とした風貌の男がにこやかにアーチャーに話しかけてきた。
おそらくアーチャーが言うところの『業者』なのだろう。
「衛宮さん、そちらは埋め込み導火線式で大丈夫ですか?」
「かまいません。こちらは四寸玉程度ですから。」
「ははは、こちらも変わらない。一番大きいものでも四寸半ですね。やはり五寸だと保安距離が足りません、ここのグラウンドはそれでも広いほうですがねぇ。まあ、昨夜は雨も降ったようなので飛び火の心配はなさそうですよ。」
分からない単語が飛び交う中、やることもなくただ闊達な言葉を交わす二人を見るだけ。
こういう時のアーチャーはやけに生き生きとしている。
「士郎、こっちだ。」
いつの間に話し終えたのか、名前を呼ばれてはっと顔を上げる。

アーチャーは例のブリキ缶と筒を抱えてグラウンドの中央に向かっている。
後を追いかけていくと手ぶらになったライダーと慎二がアーチャーに何かを告げて校舎の方へ向かっていく。
「手伝え。」
「スコップ……穴掘りか?」
「ああ。見えにくいだろうが石灰が引いてあるだろう?」
指差された地点から放射円状に白い線が延びている。
「まず×印のところを15センチ掘る、筒を埋めて安定させるための穴だ。そこから導火線を半地中に置くから……そうだな、白線のところを5センチくらいずつ溝をひく。」
「わかった。」
例年通りでいけば8時過ぎには花火が始まる。
あと40分ほどしかない為、ただ黙々とスコップで穴を掘る。
業者の若い男衆も加勢してくれ、時間内に筒を埋めて導火線をひくところまで終わらせた。
アーチャーは30個近い玉をひとつずつ、慎重に導火線でつないでいく。
時折手を止めてじっと玉を見ているのはただ見ているのではなく、中を視ているのだろう。
これでもない、あれでもないと選んでは導火線につなぐ。
ようやくつなぎ終わった頃には人の波が体育館からあふれてくるのが見なくてもそのざわめきで分かった。
「よし、これで最後だ。」
導火線の種類と長さを確認しながらアーチャーは立ち上がり、汚れたズボンを軽く払った。
「導火線、そんなに何種類もいるのか?なんか、やけに太い気がするんだけど。」
「まあアレだ、演出というやつだな。」
気温は結構低いが、一歩間違えれば大事故になりかねない作業の為かアーチャーの額には汗が浮かんでいる。
「ほら。」
「お、気が利くな。」
ぬるいペットボトルのお茶を差し出すと、美味そうにすぐ半分を空にした。
「そろそろ離れるか。こっちに来い。」
手を取って引かれても暗いから恥ずかしさはあまりない。
でも残る気恥ずかしさはあって、ぶっきらぼうな返事を返して校舎の方へと歩いていく。

校舎内に入っても手は繋がれたままだったが、窓側に鈴鳴る人並みの視界に俺たちは入らない。
階段を上る。
そう言えばこの辺りで誰かさんと戦ったこともあったっけ。
「そら、特等席だ。」
屋上まで上りきってドアを開けると暗がりに人影が見える。
「よ、衛宮!」
「美綴?え、一成……後藤、おい、ちょっと聞いてな……」
ずらりと手摺りに沿って並んだ旧友たちの顔ぶれに言葉が途切れた。
卒業以来半年ぶりに会う顔も少なくない。
「しろー、おっつかれさまー!うっふふ、手をつないじゃってぇ〜、ぅひっく」
「ぅ、わぁ!」
繋いだままだった手を慌てて離すとアーチャーが眉を寄せるのが暗がりでもわかった。
「藤ねぇ……に、雷画のじーさんまで!?って、お前ら未成年だろうが!どっから持ち込んだんだよ、そのアルコールは!」
「固いことは言わない約束でござる!」
「そうだぞ衛宮、無礼講だ。元担任の音頭でやっているのだからな。」
「マジ……かよ、一成―――」
「先輩、何にします?ビールと缶チューハイと、日本酒もありますよ?」
制服の桜は流石に飲んでいるようではないが、一升瓶を手に雷画じーさんにお酌をしている。
懐かしい顔ぶれにそれでも話は弾んで、気がつけば右手に日本酒の入ったコップ……ではなく科学室から持ってきたらしいビーカーを持っていた。
「お、始まるぞ!」
後藤の声に座り込んで話していた面々も腰を上げて手摺りに並ぶ。

  ヒュ―――ドンッ……パァン

「たーまやぁ〜」
玉の大きさの割りに迫力のある打ち上げ音とほぼ同時、目の前に色とりどりの花が咲く。
確かに特等席だった。
「お、花火が分裂した……」
「綺麗ですねー!」
それぞれに感嘆しながら曇りの無い空に咲く花を見る。
六連花火は小ぶりながらも、水・金・地・火・木・土星の色と形を現して空に並ぶ。
大きさの比率まで見事で下の方からも歓声がどっと沸く。
高さの違うしだれ花火がカーテンのように空を彩り、きらきらと砂金をばらまくように煌めきを残す。
パァッと空を明るくした閃光花火に遅れて、色変化も見事な牡丹が咲いた。
それを最後にやや沈黙が流れる。
「さて、と。」
横にいた男が体を起こしてどこかへ行く。
「アーチャー?」
「フィナーレだ、よく見ておけよ。」
桜とライダーから何かを受け取って、少し離れた場所にある台にのぼっていく。
ポッと明かりがともる。
それがアーチャーの持つ弓につがえられた鏃に灯った火だと気づいたのは、それが放たれたあとだった。

僅かに弧を描きながら、それでも一線にグラウンドの中央へ。
アーチャーが周到に用意していた導火線に寸分違わず当たった。
一瞬の後、青緑の鮮やかな光がグラウンドを走り、それは次第に黄色、そして赤へと変化し赤紫になった。
ぐるりと円を描いて走った炎は微かな残り火を残して消えた……そして。
一つ……………二つ…………三つ………四つ……五つ…六つ。
速度を上げながら古風で、それでいて艶やかな花が空を彩っていく。
花が我先にと咲き誇るように、それは空を埋め尽くしていく。
そしてやがてそれらも消えた。
息を呑んでいたそれを解こうとした瞬間。

  ヒュ――――――

それは打ち上げられた。


腹に響く重低音が3つ、さっきまでの倍はあろうかという見上げる程の高さに、大輪が咲いた。
大きく花開き、零れる朝露のように色を変えるそれらはゆったりと、そして弾かれたように勢いを増して空を伝い落ちる。
まるで、そこに本当の花があるかのように。

秋の夜長を彩った饗宴は、そうして終わった。

「凄かったね、最後の……」
「うん―――綺麗だった。」
周りの言葉を聞きながら、視線をめぐらせる。
さっきと同じ、台の上に立ったままの男は静かに俺を見て……笑っていた。
男の唇が動く。
『どうだ?』
得意げに笑うそれに、自然と笑みが浮かんだ。
「最高だった。」
言葉は聞こえなくても届くはず。
台から下りたアーチャーは真っ直ぐに俺の前に歩いてきて俺の髪の毛をくしゃっと撫でる。
「当たり前だろう、お前の為に私が作り直したのだから。」
空いっぱいに広がったそのプレゼントは消えてしまったけれど……。
俺の中に咲いた花はアーチャーがいるかぎりきっと、消えることはない。
「ありがとう。」

宴の終わりに。
周りはみんな興奮に染まっていて、誰も見ていないその中で俺たちは触れるだけのキスをした。