少年の反応はともかく、男は少年を性欲の対象に引き下げてしまった。
それが法の上で等しく裁かれることがないことは田中とて知っている。
言わばこれはつもり積もった感情の爆発といっていいだろう。
「美味そうなちんぽしやがって、誰に開発された?あのアーチャーって男か?ガイジンのモノがいいのか、お前。相当の淫乱じゃないか、なぁ?」
腰の方から下半身を押さえ込んだ男は両腕でがっちりと太腿を押さえ、そのまま少年のものにむしゃぶりついた。
「んひぃ……ぃひぁ、ぁあ―――ッ」
鼻を突くにおいも味も気にならない。
とろとろと零れるものは先走りの味だろう。
青臭いくせに乳臭いような、幼稚な味。
今まで男のそれを味わったことはないが、女の蜜とも違うそれを田中は夢中で吸った。
「やだぁ……先生、せんせぇ―――や…めろよぉ!」
吐息交じりの悲鳴は決して大きくは無い。
放課後の喧騒の中では扉一枚を隔てるだけでかき消されてしまう。
「うるせぇな、いっそオレのでも咥えてろ……わかってるだろうが歯はたてるなよ」
「ひ…や、ぁんむ―――ッッ」
軽い少年の身体を反転させ、椅子にどっかりと腰を下ろした男は少年の口に自分の逸物を宛がう。
逆立ちのようにされた少年の股間に再びむしゃぶりつきながら、右手の指を尻の狭間に巡らせる。
思ったとおりヒクヒクとひくつくそこがみつかる。
既にべとべとになっていた指を強引に突き入れると、一瞬少年の体が凍りついたように固まった。
しかしその一瞬が過ぎると、熱くうねるナカが指に絡みつく。
田中の思ったとおり初めてではない反応だった。
力の抜きどころをちゃんと分かっていて、強引な指の動きに合わせて息を抜くのが陰毛を擽る少年の息でわかった。
口に押し込まれたそれに吐き気を強引に押し込まれながら、少年は頭の中でたった一つの名前を読んでいた。
それを知ってか知らずか、舌を使わない少年の尻を手加減なしで田中は叩く。
日焼けしていない臀部にくっきりと浮かぶ真っ赤な平手の痕は、男の劣情を駆り立てるのに一役買った。
無遠慮に指を二本に増やし、無理やり中をほじればゴボッと音を立てて少年が口から逸物を抜き去る。
「ひぎいいいぃぃぃぁあぁあぁあああああッ!」
びゅるる、と勢い良く田中の口に熱い迸りが放たれる。
ねっとりと喉に流れるそれは、間違いなく少年が感じていた証拠だった。
口を離してもびくびくと撒き散らすした精液に男の顔が汚れていく。
顎を伝うそれもそのまま、男は目の前の一点に焦点を奪われる。

「なん―――で」
「それをお尋ねしたいのはこちらだ、田中先生。うちの子に何か特別指導でもなさっているのですかね」
ザッと血の気が一気に下がっていくのに、どういうわけか股間の逸物に限ってはギンギンに勃起したままだ。
「この子のミルクは美味しかったでしょう?濃厚で、甘くて、とろけるような舌触り―――私も大好物でしてね。お前のミルクは私の物だと、きつく言いつけていたのですが……」
田中はその瞬間死を覚悟する。
その場に現れた男―――衛宮アーチャーの目は、鋭利な刃物のように男の内側を抉る。
「まさかまさか、私以外の、しかも駄犬に味見されるとは思ってもいませんでしたがね」
笑みさえ浮かべる男の表情から見て取れるのは、明らかな怒り。
それ以外ににじみ出るのは殺意に他ならない。
「アーチャー……」
弱々しい声に男はフッと表情を和らげ、最早力の入っていない田中の腕から少年を奪還する。
「アーチャー」
ぐすぐすとまた泣き始める少年の背を撫でさすりながら、男はとろけるような甘い笑みを浮かべる。
今しがた自分に向けられていた表情が目の錯覚ではなかったのかと思うほどの変貌に、田中は固まったまま一言も漏らすことができなかった。
「怖かったのか?」
「あんたが…早く、こないからッ」
「仕方あるまい、お前の意識が散漫で居場所を掴むのに手間取った。帰ったらおしおきだな―――」
消毒、と口を突き出す少年の求めに応じて深く口付けを交わし―――。
唇を離すやいなや、ペッ、と田中の頬に唾棄する。
「不味い――さっさと帰るぞ。夕飯の支度が途中だ」
チュ、と少年の頬に軽いキスを落として男は少年の靴を拾い、自分のシャツを少年の腰にひっかけて踵を返す。
「ま、待て―――」
呼び止めてからしまった、と田中は思った。
「まだ何か?私とてそう暇ではないのですよ。ここまで来るのにずいぶんと力を浪費してしまいましてね」
意味は通らないが言いたいことはわかる。
不問にされようとしているのだろうが、それが逆に恐ろしい。
「なんで―――……」
「簡単なことです、この事が公になることはこの子も私も望んでいない。まったく優しい子でしょう?貴方が一人消えたところで挿げ替えがきくというのに」
冗談にならない冗談を残して、男は田中の目の前を通り過ぎ、開いたままの窓枠に脚をかける。
「それでは御機嫌よう、田中先生」
「ちょ……あなた、ここ、3階ですよ!?」
グッと脚に力が込められるのを見て、田中は気を飛ばしそうになる。
ぼやけた視界の中、男が振り向く。
「二度と、うちの士郎に手を出させませんから、ご安心を」
二人の姿が窓枠から消える寸前。
少年が悪戯っぽい笑みで田中に手を振った。
「『バイバイ』先生」

数分後、忘れ物を取りに帰ってきた隣クラスの担任に田中は発見される。
逸物をさらけ出したまま呆けた田中、そして床に散らばる子どもの衣服。
一見して異常な状況に女教師は即座に教頭を呼びに走った。
すぐさま事件は隠蔽され、不自然な長期休暇申請の名の元、田中は二度と母校に現れることは無かった。

 

「どうして途中で逃げなかった?」
「んー。だって、俺の力は人を傷つける為に使っちゃダメって、アーチャーが言ったんだろ」
「莫迦者、ああいう駄犬を撫でる程度なら構わん」
「はぁい……でもアーチャーが来てくれて嬉しかったし」

所詮はバカップルの間に入れる者は無し、そんなお話。